はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

鳥の巣

玄鳥至つばめきたるに人の巣作りを見る

太郎はベランダに水鉢を置き、メダカとタニシと睡蓮を育てています。

太郎 かわいいなぁ かわいいなぁ
しほ え、私のこと?
太郎 違いますよ。越冬したヒメダカとクロメダカのことです。睡蓮も春になって葉っぱが緑がかってきましたよ。
しほ なーんだ。太郎、急いで、もう出発するよ!
太郎 え、どこに、ですか?
しほ 今日は島田と牧之原へアトリエ樫の坂田さんが設計した住宅を見学に行くって言ってたじゃん。
太郎 そうでしたっけ? ははは、もう編集長はのんきだなぁ。
しほ のんきなのはずっとメダカと遊んでた太郎のほう!

水鉢に目高

しほと太郎は島田市の住宅を訪問します。

しほ 着いた。結構な坂を登ったね。
太郎 ニュータウンの中にあるんですね。
しほ 見晴らしのいいお宅。どうやって土地を見つけたんだろう……。

太郎 いいですねぇ。ホテイアオイ一本というのが潔いですね。
しほ もう太郎は、まず見るのはお庭の水鉢なんだね!
太郎 水鉢の水面は鏡です。住む人の心を映すんです。
しほ なに、そのわけわかんない理屈!

島田市の水鉢

しほ 家具にも凝っていらして芸術的センスの高そうなお宅よ!
太郎 そうですね。水鉢に、そう出ていましたよ。家主さんはごちゃごちゃしていない、さっぱりした方です。
しほ 太郎は占い師なのっ?

太郎 編集長、これは何の巣ですかね?
しほ 白い羽の小鳥かな。
太郎 いいですねえ。鳥の巣のように暮らしたい、という住まい手の願いですかね。
しほ そうかもね。鳥は自分で巣を工夫してつくっているけれど、このお宅も緑を取り入れたりお気に入りの家具を置いたりして工夫して住みやすくしているね。

鳥の巣

続いて、しほと太郎は牧之原市の住宅も見学しました。

しほ ここは公園の隣だ。ほんと、さっきのお宅といい、立地が素晴らしい。こだわりを持った人たちなんだろうなあ。
太郎 窓から桜が見えていいですね。

太郎 このお宅にも水鉢がありますね。
しほ やっぱり庭の水鉢が気になるんだね。
太郎 水鉢は、住まい手の心を映す鏡ですから。
しほ はいはい。で、何かいた?
太郎 まだ入居前の新築のお宅ですから、水だけでしたよ。
しほ これからこの住宅に住み始めて、どんな水鉢になっていくのか、楽しみだね。

魂魄をあたためてゐる小鳥の巣 林甲太郎