はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

コトコト市

法多山のコトコト市

しほと太郎は静岡県袋井市にある法多山はったさんを訪れます。そこでは雑貨や陶器などのクラフト・マーケット「コトコト市」が開かれ……

太郎 すごい立派なお寺ですね。本当にこんなところでクラフト・マーケットがあるんですか?
しほ たぶん、ある、はず、だよ。

法多山尊永寺

お堂に入ると多くの出店と多くの来場者。格式の高いお寺のお堂に、ゴム風船と旗飾りというとりあわせ!

太郎 こんな山奥にこんなに来場者がいるんですね。
しほ クラフトへの情熱は山を越え、川を越えるからね。

太郎 なんか編集長、本拠地に帰ってきた感がありますね。心なしか肌がつやつやしてきたような……。
しほ かもー。それにコトコト市はすごいの! 普通はお寺で開催のクラフト・マーケットでも境内にテントを張って、というところが多いけれど、コトコト市はお堂のなかに什器を持ち込んで出店してる。これは開催者と参加者とお寺の相互の信頼関係があるからできることだと思う。
太郎 なるほど。お、これは?
しほ どうしたの?

大蕉庵・松島十湖の連句額

読めないけれど連句。

太郎 これは浜松の俳人・松島十湖が捌いた連句の額ですね。
しほ 連句って?
太郎 大勢でやる詩の連想ゲームです。五七五から連想して七七を付けて、それにまた連想を飛ばした五七五をつけてと三十六句とか百句を続けていって宇宙を表現するんです。
しほ へー。なんで、それがお寺にあるの?
太郎 連句はこうして額にまとめてお寺とかに奉納することが多いんですよ。たぶんいろいろな人が寄り集まって森羅万象を表現した芸術品として後世に残すためでしょう。刀鍛冶も自信作をお寺や神社に奉納したらしいですから、お寺や神社にはそういうクラフトを保管する機能があるのかもしれません。
しほ ふーん、お寺が博物館みたいな役目を持っていたんだね。そう考えるとお寺でクラフト・マーケットって筋が通っているね。

著莪の花

法多山は著莪の盛り

しほ 久しぶりにクラフト・マーケットに参加してエナジー・チャージした感じだな。
太郎 そうですか。私も自分でつくること、自分で売ることの楽しさを味わってみたいな、と思いました。
しほ いいね、何を作る?
太郎 玉ねぎですかね。
しほ それはファーマーズ・マーケット。

法多山コトコト市

風船は風を失ふ著莪の花 林甲太郎