はじめてのこよみ暮らし
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
浜松市の初午を見に行く。
2月7日は2月最初の午の日、初午ということでしほと太郎は近所の稲荷社を訪れました。
しほ なんで初午はお稲荷さんのお祭りなの?
太郎 和銅4年(711年)の旧暦2月初午の日に、京都の伏見稲荷大社のある山へ祭神ウカノミタマが降り立ったから、だそうです。旧暦2月なので新暦3月の初午にお祭りをするところもあるらしいです。
しほ ウカノミタマってなんの神様なの?
太郎 ウカノミタマは稲荷神とも呼ばれ、もともとは穀物の神さまだったのですが、のちに農民や職人や商人や鍛冶師や芸能人の神様にもなりました。仏教のダキニ天を稲荷神と呼んでいるところもあって、たとえば三大稲荷のひとつとされる愛知県豊川市にある豊川稲荷は神社ではなく寺院で、秘仏ダキニ天があります。
しほ 豊川稲荷は神様なのにお寺なんだね。
太郎 明治維新前は日本は神も仏も一緒でしたからね。稲荷神はあらゆる職業の神様になったので多くの町や村で祭られていますし、芸能人の神様なので遊廓や歓楽街でも多く祭られています。東京だと、新宿歌舞伎町近くの花園神社や吉原遊廓にある吉原神社は稲荷神ウカノミタマを祭っています。
まず、しほと太郎は浜松南図書館の近くにある伏見稲荷講務本庁浜松支部を訪れます。
太郎 ここは浜松の稲荷講みたいです。
しほ 稲荷講って?
太郎 伏見稲荷大社を中心に稲荷神を祭る講員たちの組織ですね。狛犬代わりに稲荷の狐があります。左右で口にくわえているものがちがいますね。
しほ 本当だ。でも初午なのに何もやっていないね。
太郎 いまは午後ですからね。午前にお祭りをしたのかもしれません。2月7日に伏見稲荷大社が初午大祭をやっているのですから新暦3月に初午を祭るということはないでしょう。
しほ 残念。
次にしほと太郎は浜松駅南のアーケード商店街「砂山銀座」の中にある砂山稲荷を訪れました。
太郎 砂山稲荷の祭神は「われはこれ吒枳尼天なり」と言って白い狐に乗って現れたらしいですよ。ここは仏教系の稲荷社ですね。
しほ 仏教? でも鳥居があるよ。
太郎 明治維新前の神仏習合が残った例ですね。
浜松駅北の繁華街・鍛治町にある黒田稲荷神社も訪れました。
しほ 繁華街のどまんなかのお稲荷さんだね。
太郎 繁華街で、地名が「鍛治」町、まさに稲荷社があるべくしてある町ですね。それと祭神が豊受大神すなわちトヨウケビメですね。
しほ トヨウケビメって誰? 稲荷神のウカノミタマでもダキニ天でもないの?
太郎 ダキニ天はインドの神さまですから別物です。神話ではウカノミタマとトヨウケビメは別の神様なのですが、同じ穀物の神様なので一緒のものと考えられています。実は、ダキニ天もウカノミタマもトヨウケビメもみんな稲荷神です。
しほ へえ、お稲荷さんって結構いい加減なんだね。
太郎 まあ、そのいい加減さが庶民に受けたのかもしれませんね。
しほ そういえば、この「アンコ椿は恋の花」って何?
太郎 いまの若い人は知らないんですね。「アンコ椿は恋の花」は演歌歌手の都はるみさんのミリオンセラー曲です。都はるみさんは黒田稲荷で祈願してヒット歌手になったみたいですよ。
しほ やっぱりお稲荷様は芸能の神様なんだね。あー、お腹すいちゃった。緑色の稲荷寿司を買って食べよ。
太郎 編集長は神さまよりお寿司ですね。それにしても偶然ですが、訪れた3つの稲荷社は3つとも祭神が違いました。まとめてみましょう。
しほ 太郎は誰と話しているの?
【まとめ】今回訪れた浜松市の3つの稲荷神社
浜松支部 ウカノミタマ(稲荷神)
砂山稲荷 ダキニ天(稲荷神)
黒田稲荷 トヨウケビメ(稲荷神)
あなたの近所にあるお稲荷様の祭神はどの「稲荷神」ですか?
名無き者唄へや踊れ初午だ 林甲太郎