森里海の色
四季の鳥「ツグミ」

ダルマさんが転んだ

11月中旬の日曜日、市民公園の運動場には野球に興じる少年たちの大きな声が響いています。グランドの芝の上にいたのはツグミ。ツグミは四、五歩進んでは立ち止まり胸を反らし、また四、五歩進んで立ち止まります。まるで子どもの頃に遊んだ「ダルマさんが転んだ」をやっているようです。
ツグミが到来するのは10月、大群でやって来て、最初は山地の林で過ごします。それから拡散しながら平地に降りてきます。山に大群でいる時期は、かつてツグミにとっては受難の時で、食料として膨大な数のツグミが捕獲されていました。島崎藤村の『夜明け前』を読むと、明治維新前後の木曽谷の生活のようすがわかって面白いのですが、ツグミを食べる話が何度も出てきます。戦前昭和の記録によれば、木曽谷での野鳥の捕獲高はツグミ19万羽、アトリ16万羽、マヒワ6万羽と、にわかに信じられない数があがっています。ツグミを食べたら今の焼鳥なんか食えたもんじゃないという話はよく聞きます。きっと美味しいのでしょうね。

ツグミ-鶫

ところで、ツグミはなぜ「ダルマさんが転んだ」をやるのでしょうか。立ち止まった後に、ちょっと首をかしげて耳をすますような仕草をすることがあります。もしかしたら地中のミミズのありかを聞き取っているのかも知れません。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。