はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

讃岐のベーハ小屋

讃岐のベーハ小屋

全国の工務店に勤める広報女子たちが5月の香川県に集結。勉強熱心な広報女子とともにしほと太郎は、香川県の工務店・菅組菅徹夫社長の案内で「ベーハ小屋」を見ました。「ベーハ小屋」って?

しほ 山に近づくにつれて麦畑が多くなったね。
太郎 そうですね。七十二候の麦秋至むぎのあきいたるにはまだ早いですが、もう麦穂は黄熟していますね。そういえば、次の七十二候である紅花栄べにばなさかうは紅花という、口紅のような嗜好品や薬の原料になった花を題材にしています。同じように嗜好品の原料になった植物に煙草たばこがありますけれど、そのたばこ葉を乾燥させた小屋をベーハ小屋と呼ぶそうで、私たちはこれからベーハ小屋を訪れるそうです。
しほ ベーハ小屋の「ベーハ」ってどういう意味? 戦車に乗る人?
太郎 それはベンハーですね。ベーハは米葉、米国(アメリカ合衆国)の葉たばこという意味だそうです。在来種は天日干しで乾燥できるのですが、黄葉種などの米国由来の葉たばこは人工乾燥が必要で、ベーハ小屋のような施設が必要なんですよ。
しほ それ、菅さんに教えてもらったんでしょ。
太郎 そうですよ。

香川県

讃岐地方の植田

田植えが終わったあとの讃岐の田園風景。新緑の林のなかの坂道をおりると見えてきたのは……

しほ 坂道をおりると新緑のなかにまた眼下に水田が見えるよ。
太郎 本当ですね。崖下の集落といった感じです。

崖下の集落

朽ちた小屋

しほ 坂道の途中に見えてきた、朽ちかけた建物が、ベーハ小屋なのかな。
太郎 そのようですね。特徴的な越屋根があります。黄葉種の葉たばこを釜で焼いて人工乾燥させるときの煙を出すために越屋根が設けられたそうです。

ベーハ小屋

しほ そういえば太郎、煙草の種を発芽させようとしていたよね。
太郎 ソクラテスの煙草さんで買った種のことですね。香川県に来る前にバーレー種や黄葉種を発芽させましたよ。

たばこ専売法(1984年のたばこ事業法成立により廃止) 第二章 耕作 (耕作の許可) 第四条 たばこは、公社又は第八条第一項若しくは第二十六条第一項の許可を受けた者でなければ耕作し、又は試作してはならない。 – 種はソクラテスの煙草さんで購入。 #煙草 #俳句と農耕

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しほ へぇ~。それじゃあ葉っぱができたらベーハ小屋を造って乾燥させてみたら?
太郎 ふむ。たばこ専売法が廃止されたので煙草を栽培することは自由にできるんですが、たばこ専業法によってたばこを製造するのはJTしかできないんです。だからたばこ農家ではない一般人である私が葉たばこを乾燥させるのは、つまり製造たばこの製造行為をするのは、違法なんですよ。
しほ そうなんだ。なのに何で太郎は煙草を栽培しているの?
太郎 なんででしょうね。ひとつはかつて栽培を自由にできなかった植物を栽培する楽しみを味わいたいから。そしてインディアンをはじめ私たち人類が喫んできたタバコがどうやって育つのかを知りたいという好奇心からですね。服好きが綿や蚕を育てるのと似ているのかもしれません。
しほ へぇ~、変なの。

ベーハ小屋を水田ごしに。

早苗田や空に紫煙のふきのこる 林甲太郎