森里海の色
柿木村の一輪挿し「ハナミズキ」

花水木

辺境の山々は青葉が一段と濃くなり、むせ返るような緑が増殖している。
映画のとなりのトトロの森の増殖シーンを彷彿させるようだ。

季節は「紅花栄う」の候だけどこの地ではあまり紅花を見かけない。
紅色と言えば、裏庭の花水木が薄紅色の花を咲かせた。

薄紅色の可愛い君のね
果てない夢がちゃんと終わりますように
君と好きな人が百年続きますように……
僕の我慢がいつか実を結び
果てない波がちゃんと止まりますように……

一青窈のハナミズキの曲は難解な詩に深い想いが込められ心にずしりと響く歌だ。
(9.11や3.11をどうしても思ってしまう。)

白色から薄紅色に変化するグラデュエーションはとても美しいけど曲調が頭を離れず僕にとっては5月の切ない花なのだ

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。