森里海の色
柿木村の一輪挿し
「センニチコウ」

千日紅 せんにちこう

 百日紅さるすべり 十倍すれば 千日紅
という戯れ句があった。

先候は百日紅を挿して飾った。
百日紅は長い期間咲く花だが、千日紅は千日間も咲くとはオーバーだけど更に花の命が長いのだという。
ドライフラワーにすれば若しかすると千日のあいだ色合いを愉しめるのかもしれない。
「色褪せぬ愛」という花言葉はなるほどだ。

道端にひょろりと長い茎の先に赤い穂花が退屈そうに夏風に揺られていた。

ボンボンのようでもあり子供の頃、夏祭りの縁日で見かけた飴菓子のようにも見える。
細い麦藁の先っぽに食紅で彩られたイチゴ味の飴、
ペロペロと舐めていたら舌が真っ赤かになった。服に垂れて白シャツを汚し母親に怒られた。
今考えるとどぎつい赤色はあまり体に良いものじゃ無かったのだろう。
そんなことはお構いなしの時代だった。

万日紅という花の名は聞いたことがない。(園芸品種にはあるのかも?)

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。