森里海の色
柿木村の一輪挿し
「キンモクセイ」

金木犀 きんもくせい

我が家には玄関脇と裏庭に金木犀が植えられている。
風に運ばれて表から裏からいい匂いが家中を包み込んでくれる。

その甘い香りは少し落ち込んでいたりザワザワと心が騒いでいるときにも気持ちをほっと穏やかにさせてくれる。

若い頃はそれほど気にもしなかった金木犀だが、年を重ねたからだろうかとても大事な木の一つになった。
オレンジがかった黄金色の花弁の一つ一つはとても小さくて可憐だけど集まった花姿は気品さえ感じさせてくれる。
そのうえにこの甘い香りだ。

やっぱり花は僕の気持ちを安らがせる。
母のようであり、
恋人のようであり、
大事な人のようであるのだ。

この一年間、七二候
それぞれの時季のそれぞれの僕なりの花を挿してきたつもりです。

見苦しい画像と拙い短文を寄せてきましたが長い間
お付き合いいただき本当にありがとうございました。

  開けた窓キースの音に金木犀   風来坊

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。