森里海の色
柿木村の一輪挿し
「キョウチクトウ」

夾竹桃 きょうちくとう
灼熱の夏が闊歩している。

夏の花と言えば夾竹桃だ。
名前のごとく桃色の花弁が夏の青空に映えている。
ご近所の庭先に咲いた夾竹桃が通りに覗いて風に揺られていた。

ご近所の一人暮らしのMさんはどうやらあまり草花には興味が無いらしく先代が植えられた数々の木々の花たちは勝手気ままに咲き乱れるのだ。
それは限界集落と呼ばれ(有り難くない名前だけど)住まい手の居なくなった空き家の庭先でも同じ光景が並ぶ。

人はいなくても草は伸び、季節が来ると花は咲く。

未曽有の豪雨被害に見舞われたヒロシマ市の花が夾竹桃だと聞いたことがある。
原爆の焦土の街をいち早く彩どり人々の希望をつないだのがこの花なのだ。

この夏、ヒロシマの街にも夾竹桃が咲き誇り始めたのだろうか。
災害に遭われた方々の希望の花となって欲しいと願うのみなのだ。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。