森里海の色
柿木村の一輪挿し
「ミヤコワスレ」
裏庭の水辺に都忘れが咲いた。
薄紫の可憐な一輪が風に揺れていた。
花の名前はかくも風雅で切ないのだろう。
街の骨董品屋をぶらり覗くのが好きだ。
萩の街を歩いていたら小さな骨董品屋があった。
狭い店内を品物にぶつからない様に物色していたら小さな一輪挿しが目に留まった。
店主の老人にどこの物か聞いたら青備前という言葉が返ってきた。
始めて見た青い備前焼は一輪挿しにしては高額の値札が付いていた。
諦めて一旦外に出たのだが思い直して店内に入り負けてもらえないかと尋ねるとしばらく奥のほうに入り誰かと相談している様子だった。
老人の奥さんだったのだろう。
思いがけず値札の半分以下の価格で手に入れることができた。
くすんだ青備前の容れ物に都忘れの可憐だが高貴な色が似あうと思った。