森里海の色
柿木村の一輪挿し「ヤマアジサイ」

山紫陽花

六月ももう半ばを過ぎた。
蒸し暑さと梅雨寒が入り交じり、そのつど長袖シャツを出したり仕舞ったりでどうも落ち着かない。

僕の住んでいる集落の近くには源平の戦に敗れた平家の落人たちが追っ手を逃れて隠れ住んだと謂われのある幾つかの滝がある。
その滝に向かう散歩道の林道沿いには近所のおじさんが供養にと毎年のように植えた紫陽花が今の時期が盛りで紫やピンクの彩りを楽しませてくれている

やっぱり六月の花と言えば紫陽花。

ガルテンの店の裏庭に植えてある一株の山アジサイも梅雨ブルーの花を咲かせた。

小さな萼片の集まった大輪の紫陽花は艶やかでありこの時節の憂鬱ブルーを和めてくれるけど僕は山アジサイやガクアジサイの控えめな花姿が好きだ。

薇雨に濡れている淡い青色と清楚な花姿を眺めていると頭の中を「六月の雨」という小椋佳の甘い唄声が流れてきた。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。