森里海の色
柿木村の一輪挿し「ジンチョウゲ」

沈丁花

遠き春、まだ見ぬ春……

「春よ、来い」の歌詞の中で春は待ち焦がれる季節として唄われた。
春は花の季節でありながら別れ、惜寂の色の季節でもある。

そしてジンチョウゲは面影色の花なのだ。

近所の小さな池のほとりに植えられた沈丁花から仄かな甘い香りが漂っていた。

各地でサクラの満開の便りが聞かれるけど我が家の裏山のサクラの大木はようやく蕾が膨らんだ気配だ。
この陽気で一気に開花し、そして散っていくのだろう。

待ち侘びの春は切なさも漂う。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。