はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

蒲冠者源範頼ゆかりの蒲桜

Delicious Kitchen 浜松卸商団地

平日の昼、しほと太郎は浜松市の商業団地で桜を見ました。

しほ もう桜の季節だね。
太郎 七十二候は桜始開さくらはじめてひらくになりますからね。
しほ そっか-。川沿いの桜並木とか見たいね。
太郎 それもいいですけれど、浜松ならではの桜を見に行きませんか?
しほ なに、それ?

休日、しほと太郎は袖紫ヶ森の蒲神明宮へ行きます。

蒲神明宮の鳥居

しほ いい神社だね。歴史も古そう。
太郎 ご明察ですね。ここ浜松市東部、通称「蒲」は中小路さんの記事にあったようにむかし蒲御厨かばのみくりやといって三重県の伊勢神宮が持つ荘園でした。御厨は、神社の荘園という意味なんです。だから蒲神明宮は伊勢神宮の支店のような神社で、歴史も由緒もちゃんとあるんです。それになんといっても浜松最古の神社ですから。
しほ そうなんだ。ここと「浜松ならではの桜」って何か関係あるの?
太郎 おおありです。じゃーん、これです!

蒲神明宮の蒲桜

しほ めっちゃ保存樹林。
太郎 おっと、その奥です。これは蒲桜というここ蒲の地を起源とする桜の品種なんです。もう六輪以上咲いていますね。本日、開花宣言を宣言いたします。
しほ 太郎は誰なの!
太郎 冗談はさておき、蒲桜は山桜と江戸彼岸桜の交配種で、この地で育った蒲冠者・源範頼という武将がこの地に生えていた蒲桜を気に入って埼玉県や三重県へ苗木を移植したという伝説があります。
しほ 源範頼さん、めっちゃ植木職人の素質あるね! 桜の移植って素人には難しいのに。
太郎 そうですね。ちなみにもとの蒲桜は絶えてしまったので蒲神明宮の蒲桜は三重県鈴鹿市にある石薬師の蒲桜から移植したみたいですね。
しほ なるほど、浜松ならでは、いいえ、蒲ならではの桜ってわけね。で、源範頼さんって誰?
太郎 源頼朝と源義経の間にはさまれて影のうすい兄弟です。
しほ へー。

蒲神明宮のカバザクラ

蒲神明宮の蒲桜、葉とともに咲く。

蒲地区以外にも蒲桜が植えられていると聞き、しほと太郎は佐鳴湖北岸にある史跡源範頼別邸御茶屋跡を訪れます。

太郎 ここが史跡源範頼別邸御茶屋跡ですね。
しほ って、民家じゃないのー!
太郎 意外ですね。

富塚町の史跡源範頼別邸御茶屋跡は民家?

太郎 ちょっとお邪魔してみましょう。
しほ お庭に桜があるんだね。これも蒲桜?
太郎 そのようですね。札に石戸蒲桜の後継樹と書いてあります。「佐鳴の風」によれば、源範頼は邸宅のあった蒲の龍泉寺(飯田町)から馬で佐鳴湖畔を一周し、この地で茶で一服したという伝説が残っています。蒲冠者ゆかりの地ということで蒲桜を植えたのでしょう。
しほ 源範頼さんの気持ち分かる。私も湖好きだから。

源範頼別邸御茶屋跡の蒲桜

太郎 もとの浜松にあった蒲桜はもうないけれど源範頼が東と西へ枝を挿し木して、その東西から蒲桜が浜松に里帰りしたってすごいですね。
しほ なるほど。う~ん、太郎……ちょっと、いい?
太郎 はい、なんでしょう。

カバサクラ

源範頼別邸御茶屋跡の蒲桜

しほ 蒲神明宮の蒲桜は山桜のように葉つきだったけれど、この別邸御茶屋跡の蒲桜は葉がないよね。ほんとうに同じ蒲桜?
太郎 あくまでも伝説ってことですよ。

あなたの地域にはどんな桜の品種がありますか?

つはものの袖に触れ散る桜かな 林甲太郎