はじめてのこよみ暮らし
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
芒種
二十四節気は芒種となりました。芒種は芒のある穀物の種を蒔くことで、芒のある穀物とは粟や黍などの雑穀を指します。ベランダ農耕民族の太郎は……
太郎 編集長、届きましたよ。
しほ 届いた? え、なにこれ?
太郎 粟の種です。
しほ 粟って、雑穀の粟?
太郎 雑草という草がないように、雑穀という穀物もないんですが、おっしゃるとおり、粟です。
しほ (パッケージを読む)へぇー粟って狗尾草からできたんだね。秋の七草を思い出すね。
太郎 たしかに、よく見れば粟と狗尾草は似ていますね。
しほ だね。でも、なんで太郎は粟を買ったの?
太郎 二十四節気が芒種だから〈芒種なり水盤に粟蒔くとせむ/草間時彦〉にならって、という理由もあります。
しほ 芒種って田植えのことじゃなかったんだ。
太郎 田植えは種ではなく稲の苗を植えますから、時季としては遅いですね。「米」という漢字はその稲の実を表していますが、もともとは黍の実や粟の実を表していました。今でこそ“雑”穀と呼ばれていますが、もともと黍や粟は代表的な穀物だったんです。そんな粟もいつの間にかマイナーな食材になってしまいました。
しほ 確かに、粟をつかった料理は雑穀米とコハダの粟漬けくらいしか知らないなぁ。
太郎 粟は雑穀ブームに乗っていますが、まだ収穫量は少なく日本ではほとんど輸入に頼っています。そんな日陰の“雑”穀を私は簡単にベランダで育ててみたいと思ったんですね。これがもうひとつの理由です。
しほ 変なのー!
太郎は脱脂綿に水を含ませ、粟の種を蒔きます。しばらくおいていると……
太郎 編集長、ほらもうだいぶ芽が出ていますよ。
しほ ほんとだ。粟はすぐ発芽するんだね。私でもできそう!
太郎 かもしれませんね。
あなたも“雑”穀を育ててみませんか?
粟蒔けば南に雲が増えてゐる 林甲太郎