森里海の色
柿木村の一輪挿し
「マンジュシャゲ」

曼珠沙華 まんじゅしゃげ 彼岸花

暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので今夏のあの激暑も過ぎ去った夏の思い出の一コマに綴じられようとしている。

今、辺境の野辺には赤い曼殊沙華が彩を放っている。

秋彼岸の頃に咲くから彼岸花とも呼ばれる。
血を思わせる独特の赤色とその名から仏界あるいは死を連想して不吉だとこの花を好きだという人をあまり見かけた事が無い。

子供の頃、その花に触るなと大人から教えられたような記憶がある。

曼殊沙華も仏教用語に由来するが「天上の花」と呼ばれ、これだと何やら床しい気分になる。

それでも曼殊沙華が身近に感じたのはやはり歌姫山口百恵さんの歌が大きい。
歌ではマンジュシャカと唄われる。

マンジューシャカ 恋する女は
マンジューシャカ 罪作り
白い夢さえ 真紅に染める

感情を抑えて歌う百恵さんは菩薩に例えられる事が多かった。
菩薩には天上の花が似合う。

それにしてもだ。
曼殊沙華の花を飾ったのは初めてのような気がする。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。