はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

つきたての豆餅

餅つき

大晦日を翌日にひかえた三十日、しほと太郎は車で天竜川を渡り磐田市へ行きました。アトリエ樫の坂田卓也さんが設計した西平松の家、ことIさん宅を訪れるためです。大晦日を翌日に控えたIさん宅では……。

しほ たぶん、あの竹林のところだよ。
太郎 編集長、車がたくさん置いてあって子どもがたくさんいますよ。
しほ 人が集まっているから間違いなくここだろうね。
太郎 車を停めますね。「キキー」(車のブレーキ音)

Iさん宅は庭に面した大きなガラス戸を持つ開放的な家で、土間に置かれた大テーブルにはIさんの友人たちが持ち寄ったレンコンの揚げ物やコロッケやケーキなどすぐにつまめるお料理が所狭しと並べられています。土間奥の薪ストーブの鉄板にはカレーや豚汁やお汁粉の大鍋が置かれていました。

しほ いいにおい、おいしそうだね。
太郎 ですね。私たちも何か作って持って来ればよかったですね。

しほと太郎は庭へ行きます。民家の裏手、センダンの木の下にドラム缶で作ったかまどが建てられて、蒸籠が白い湯気をあげています。石臼がどっしりと置いてあります。

太郎 煙が目に沁みますね。
しほ 餅つきを見るのは小学生以来だな。
太郎 ちなみに僕は今月、中小路さんが蒲御厨おかげ朝市でやっているのを見ましたよ。見て、餅を食べただけですが。
しほ 蒸籠から餅米のいいにおいがするよ。太郎、お餅をついてみたら?
太郎 それでは、やってみますか。

太郎は餅米を杵で練ったあと、餅をつきます。太郎は餅つきに慣れていないのか、ちゃんとお餅をつけていません。へなっという音がします。

下手な餅つき

しほ 太郎、ぜんぜん腰に力が入っていなかったよ
太郎 なあに、編集長。これからですよ。

三十回ほど餅をついて、やっと太郎のついた杵が餅つきらしい音をたてました。

太郎 ふふふ、これが私の実力というものですよ。
しほ やっと餅つきに慣れてきたんだね。

餅がつけたらちぎって食べます。しほと太郎はお腹いっぱいお餅を食べて帰りました。

お汁粉

生き恥を力に変へろ餅を搗け 林甲太郎