はじめてのこよみ暮らし
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
大安寺酉の市
しほは太郎より一足早く東京出張から帰ってきました。しほはひとりで浜松市の繁華街・肴町へ出かけます。11月18日は肴町にある大安寺で酉の市が開かれています。
しほ 今日は雨が降っていて寒いなぁ。えーっと、酉の市は…たしか、大安寺だったな。あ、通りに「酉の市例大祭」って横断幕が張ってある。太郎が言っていたのはこれかな。
大安寺の境内や外には縁起物や粉ものの露店が出ています。
しほ 太郎は熊手のことしか言ってなかったけれど達磨も売っているんだね。
でも群馬県の高崎達磨よりこっちの達磨のほうが口髭が濃いかも……。
しほは達磨に疑問を持ったので、達磨を売っている若い香具師に声をかけます。
しほ こんにちは!(あ、イケメン)
やし はい。
しほ あの、私、酉の市に来たのは久しぶりで、よくわかっていないんですけど。この達磨はなんていう種類のものですか? 私、群馬県出身なんですけど、ここの達磨って群馬県の高崎達磨より口髭が濃いみたいなんです。
やし うーん。これは福達磨ということしかわからないですね。
しほ 福達磨ですか…。地方によっていろんな達磨がある訳ではないのかな。
やし さあ、どうかな。よくわからないです。
しほ そうですか、ありがとうございました。
達磨の露店を後にし、しほは本堂に上がりました。売店で「日本全国開運達磨」の絵が描かれた手ぬぐいを発見。32種類の達磨が描き分けられています。
しほ やっぱり、同じ達磨でもいろんな種類があったんだ。このあたりは大井川達磨という種類みたいだけど、露店にはなかったなあ。
太郎 近江達磨は目が大きくて見ていると不安な気持ちになりますね。
しほ 太郎! 帰ってたんだ。
太郎 昼過ぎに浜松に帰ってきましたよ。ちゃんと取材してて偉いですね。
しほ そうだよ。地方によって達磨の形が変わっているみたいなの。
太郎 ここの酉の市は熊手だけではなく福枡や達磨も売られているのが特徴ですね。大安寺の祭神は毘沙門天なので静岡県富士市の毘沙門天大祭の達磨市と関係があるかもしれません。
しほ 富士市?「ちいきのびお」のびお静岡東部版でそのうち達磨についての記事書いてくれるかな!
太郎 全国の達磨がちいきのびおで並ぶとおもしろいですね。
招福甘酒の接待など酉の市が本格的になるのは午後6時から。しほと太郎は食事を済ませてから大安寺に戻ってきました。
しほ 夜になると活気が出て来たね。
太郎 祈祷をすませた人が大きな熊手を持ち帰りましたね。
しほ はやく甘酒飲もう!
太郎 編集長は熊手より甘酒派ですね。
しほ 私でも飲める米麹の甘酒だ!甘くておいしい。
太郎 酒粕の甘酒は苦手でしたっけ。
しほ そうだよ。それにしても酉の市を見ていると年の暮って感じがしてくるね。
太郎 今年は11月30日に三の酉までありますから、そのころにはもっと年の暮っぽくなりますよ。
別宅へゆく坂暗し酉の市 林甲太郎