季節をいただく

零余子飯・むかご飯

むかごご飯

表題写真:
むかご:遠州産 器:パナリ焼(琉球弧、新城島あらぐすくじま

日が短くなるにつれ、風は冷たく耳もかじかむ朝。けやきの黄色い葉も頂から落ち始め、カサカサと音を立てる。そろそろ湯たんぽのお世話になろうかと思いながらの散歩。井伊谷城跡への急な坂道をゆっくり登り、頂きに着く頃には汗がじんわり、筋肉から湧き上がる熱に上着を置いて、ひと息。三岳の山に、井伊谷から気賀の街、浜名湖まで見渡せる城跡、手入れされた芝生には、モグラが掘り返した跡があちらこちら。しばらくすると、冷えてきたので手足の筋をゆっくり伸ばし、葉の散ったソメイヨシノの並木道を、蕾はまだかと、桜の花を思いながら下る。

零余子

滑らないように足元を気にしながら歩くため、登りはとは異なる風景。木の枝が空を背景に描く模様、山の緑に灯火のように色づくミカン畑、遠州ではホソバと呼ばれる槇の生け垣に、からまる蔓に黄色いハート形の葉が並ぶ。自然薯の葉、蔓から根元をたどり相当の手間をかけて掘れば採れる。ひとむかし前、畑で掘ると2時間もかかったので、最近はお手軽な自然薯の実、むかごを楽しむばかり。小粒の男爵芋のように愛らしい指先ほどの小さな実。葉っぱと花の形を覚えてさえすれば、簡単に見つけることができる。桜の幹にも、柵や、手すりにまで蔓が伸びている。触れるとポロポロ落ちる実を、ひとつつまんで生で口に入れると、山芋のようにサクサク、粘りもある食感に、淡い青い味。野山を歩く度に、ひと握りずつ持ち帰り素焼きの土器に貯まる。蒸しても、茹でても、塩炒りでも美味しい。

むかご

むかご(遠州産井伊谷産) イセヒカリ(日月喜塾) 生姜(羽田農園) 土鍋(伊集院真理子)

今日は、むかごご飯。二合炊き伊賀土の鍋に、イセヒカリの玄米を研ぎ、むかごひとつかみ、生姜ひとかけら。土鍋の底を舐めるくらいの炎にして、蓋を開けたまま待つ。玄米とむかごが踊り始めると、海の塩ひとつまみか、梅干しひとつ入れ、蓋をして炎を弱める。しばらくして、甘い香りに香ばしさが加わると炊き上がり。少し蒸らして天地返しで、ホクホクのむかごご飯の出来上がり。

むかご

著者について

中小路太志

中小路太志なかしょうじ・ふとし
大和川が育む河内生まれ。幼い頃は田畑に遊び、野菜の虫取り、薪割り、風呂焚きに明け暮れ、炎と水を眺めて過ごす。潮騒、やまびこ、声など、耳に届く響きに趣き、コンサートホールの建築や音楽、舞台、展示制作に携わる。芸術と文化の源を求め、風土や人の営みから、言葉とからだ、食と農に至る。食べることは、天と地と人が繋がること。一粒の種から足るを知り暮らしを深める生活科学(家政学)を看護学校にて担当。天竜川流れる遠州在住。