森里海の色
柿木村の一輪挿し「アオキ」

青木

アオキなのに赤なのだ。
今回の一輪も赤いシリーズ。
赤いシリーズと言えば愁いを帯びた表情が印象的だった山口百恵のテレビドラマが懐かしい。
昭和の歌姫と呼ばれ人気絶頂の時期に惜しまれながら引退した彼女は「春告げ鳥」というアルバムも発表していた。

日本列島を記録的な大寒波が覆いつくした一月も行ってしまう。
凍り付き森閑とした野に山鳥たちが下りてきて羽音を響かせる。
春を待つ鳥たちが季節を先取りしているのだろう。

アオキの赤い実が弾けて中から橙色の実が覗いている。
色も形も美しく、鳥にとっては恰好の食べ物のようだ。

弾ける赤と橙色は厳しく長かった辺境の冬と凍てついた心をも溶かしてくれるようだ。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。